システム名 | 環境リポジトリプロトタイプシステム |
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機関名 | 総合地球環境学研究所様 |
導入年月 | 2012年3月 |
URL | http://rihnexers.chikyu.ac.jp |
システムの概要 | 総合地球環境学研究所では、平成24年度から5年計画で「大学間連携を通じた広域アジアにおける地球環境学リポジトリの構築 -自然と調和した社会構築を目指す新たな知の拠点形成事業-」を推進しています。 環境リポジトリシステムが対象とする分野は多岐にわたっており、従来のキーワードや時空間に基づく検索だけでなく、研究対象同士のつながりに関する知識を利用した仕組みが必要となるため、新たな取組みを含む環境リポジトリシステムについて技術面、運用面での検討を行うため、環境リポジトリプロトタイプシステムを構築しました。 |
導入インタビュー
環境問題を自然科学だけの問題ではなく、
人間文化の問題として捉えること
最初に、総合地球環境学研究所(以下、地球研)とはどのような組織かお聞かせください。
【関野先生】
大学共同利用機関のひとつで、国立情報学研究所や国立天文台のような機関と法律上同じ枠組みの組織です。地球研は人間文化研究機構に属していまして、同じ機構にはほかに国立民族学博物館、国際日本文化研究センター、国立国語研究所、国文学研究資料館、国立歴史民俗博物館がありますがそのの中では理系寄りの機関と位置付けられていますね。
環境問題は自然科学的な現象だけではなく人間文化の問題、つまり人間が引き起こしたことであり、また人間に影響するものでもあります。このため、人間の文化というものを合わせて考えなければならないという発想から、自然科学的なアプローチだけではなく人文科学的・社会科学的なアプローチも含めて環境問題を総合的に捉えていくことで地球環境問題の解決に資する、というのが地球研の目的です。
地球環境学というと理系寄りのイメージを持ってしまうのですが、理系の先生ばかりというわけではないのですね。
【関野先生】
はい。極端なところでは哲学や宗教専攻の研究者も地球研の研究に関わっています。例えば、水に関する問題を考える時に、水というのは単純に水質等で測られる水もありますが、社会の中で生活に使われる水もありますし、神道などの宗教で扱われる水や文学の中で登場する水といった人文科学的な意味で捉えられる水もあります。
そういった意味で、水に関わる環境がどうあるか、ということは単純に自然科学的に捉えられる見方だけではなく、もっと人間の社会、生活、文化の面で関わってくる側面がある。それらを総合的に捉えないと、水に関わる環境というものを正しく理解できないということです。
ひとつのテーマについて研究を進めていく体制はどのようなものなのでしょうか?
【関野先生】
そこが地球研の特徴なのですが、研究プロジェクトという単位で研究が進められます。
基本的に期間は5年間で、文系・理系問わず様々な分野の研究者が集まって研究を行っています。プロジェクトは開始に際してまず外部の評価を受けるんですが、一つの分野から、例えば自然科学だけから現象を捉えるような研究計画は、地球研のプロジェクトとしては不適切であると判断されます。
計画の段階からテーマをどのように総体的に捉えるのかというコンセプトが示されてないと、プロジェクトとして成立しないんですね。
地球環境学という領域に対するリポジトリの必要性
環境リポジトリプロトタイプシステム構築の経緯をお聞かせください。
【関野先生】
プロジェクトとは別の視点で、地球環境学を推進するための仕組みを作ろうということで始まったのが地球環境学リポジトリ事業です。
地球研プロジェクトの成果だけではなく、他の研究機関にも散在している地球環境学というテーマに関する研究資源に焦点を当てて、それらの情報を統合していくことで地球環境学を発展させることができるのではないか、という発想です。
大学のセンターや研究所等の研究機関は、精力的に多様なフィールドで専門的なデータを集めています。もちろん、各研究機関でデータベースや機関リポジトリなどを立ち上げていますが、それは一つの機関で閉じたものでしかない。
地球環境学リポジトリの場合は、「地球環境学」という一つの学問領域に対してリポジトリを作ろうとしている。つまり、機関リポジトリを一つの学問分野に置き換えたものなんです。その仕組みの一つとして環境リポジトリプロトタイプ構築を始めました。
「知識をつなげること」で新しい発見が生まれるシステム
環境リポジトリプロトタイプシステムの特徴は何でしょうか?
【関野先生】
データ自体だけでなく、それにまつわる知識を大きく活かそうとしているところですね。
機関リポジトリであれば組織ごと、研究分野ごとで研究シーンを絞り込んでいけますが、地球環境学のように様々な領域・分野の研究がかかわってくるとなると、データが何を示すのかといったデータそのものに対する分野間の相互理解やそれらのデータがお互いにどうつながってゆくのかという知識が大事になってくる。
そのために環境リポジトリで使われているセマンティックウェブ技術が非常に役に立っています。
地球環境学という考え方からデータを捉えたときに、どういった分野の、どういった研究資源を、どうつなげていったのか、という様々な領域・分野で進められる研究のエッセンスを中心に据えているという意味で、重要なシステムになってきていると思います。
たしかに、このシステムとデータが整備されていけば、「風が吹けば桶屋が儲かる」ということがデータや研究資源と紐づいた形で説明できるわけですね。
【関野先生】
そこも大事なんですが、さらに発展させて、風が吹いた時に儲かるのは桶屋だけではないだろう。他にも儲かってるやつがいるんじゃないか(笑)ということがそれまで分野ごとに閉じていた知識を積み重ねてゆくことで検索できる仕組みになりうるということですね。
つまり新しい発見につながるということですね。
【関野先生】
はい。さらに、これを逆に見ていけば、桶屋が儲かるのは風が吹くときだけじゃないだろう、もっと他にもっと儲かる要素があるんじゃないか、ということを調べられるのにも使えるわけです。
課題は今後のデータ整備
地球環境学リポジトリの今後の展望や課題等お聞かせください。
【関野先生】
課題はデータ整備ですね。
どうやってデータを作っていくのかというのが今後の最も大きな課題になると思います。データの作成者によってデータの精度や粒度に大きな差が生じることもあります。
そこが面白いところでもありますが、システム化という観点では難しいところですね。
システムとしては地球環境学だけではなく、他の分野にも応用できると思いますから、学問の複合領域に拡大する形で展開していく可能性もあるのではないでしょうか。
最後に、今後弊社に期待されることがあればお聞かせください。
【関野先生】
ひとつは息の長いサポートをしていただきたいということ。
もうひとつは、技術的にどんどん変わっていく分野なので、最新の技術に追随していってほしいということですね。
「息の長いサポート」、「最新技術の追随」とのこと承知いたしました。
ご期待に添えるように尽力させていただきます。
本日は誠にありがとうございました。
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